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本気で考える、禁酒という選択。どんなメリットがある?眠れないなどの離脱症状を防ぐには?【医師監修】

「連日お酒を飲んでいるせいか、太ってきた気がする」
「慢性的に体調が悪いのはお酒のせい……?」

そんなふうに思ったとき、頭によぎるのが「禁酒」の二文字。
ところで禁酒には、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?
また、お酒をやめることによる離脱症状やデメリットはないのでしょうか?

今回は、アルコールなど依存症の治療に詳しい国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦先生にお話を聞きました。

目次✍

1日にどのくらい飲むと危険?お酒がもたらす健康リスクとは?
女性の方が依存症になりやすい!?依存性に陥りやすい飲み方って?
お酒をやめるとこんなにいいことが!生活の質を上げる、禁酒のメリット4つ
禁酒のデメリットはある!?気になる離脱症状とは?

禁酒にチャレンジ!前向きにやめられる方法

1日にどのくらい飲むと危険?お酒がもたらす健康リスクとは?

厚生労働省が定める「多量飲酒」の基準は、1日に日本酒換算で3合以上
ビールに置き換えると、中ジョッキ3杯半~4杯といったところです。
飲みの席ではついつい飲んでしまいそうな量ですが、これ以上のアルコールを毎日飲んでいる人は依存症の危険があります。

「酒は百薬の長」という言葉があるように、お酒は適量なら、むしろ体に良いと言う人もいます。
確かに気分的に良い面はありますが、内科的な観点から見ると、基本的に良いとは言えません。

飲酒はいくつかのガンとの因果関係がはっきりしていることや、肝機能障害や胃粘膜の異常、また長期的には、動脈硬化をもたらして高血圧を招いたり、心筋梗塞脳梗塞脳出血など様々な病気を引き起こしたりする原因となることが分かっています。

女性の方が依存症になりやすい!?依存性に陥りやすい飲み方って?

「このくらい飲んだら依存症になる」という確立された知見はまだありません。
ただ、知っておいていただきたいのが、女性の方が短期間で依存症になる傾向があるということです。

男性では、日本酒換算で3合~4合を10年間毎日飲むと、依存症が発症する確率が高まるといわれています。
しかし女性については、同じ量でもたった6年間で発症する可能性が……。
これは、女性ホルモンとアルコールの分解能力に関わっています。

また、どんな人でも依存症になる可能性はありますが、孤独で、寂しい飲み方をしている人は依存になりやすい傾向があります。
つらいとき、嫌な気持ちを紛らわせるために飲む人は注意が必要です。

お酒をやめるとこんなにいいことが!生活の質を上げる、禁酒のメリット4つ

健康面や依存症のリスクに不安がある方は、一度禁酒にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
お酒をやめることで得られる4つの効果をご紹介します。

◆朝のすっきり感は格別!午前中の仕事がはかどる

にこやかに仕事をする女性

お酒を飲んだ翌日は、頭がボーっとして体が重い感じがすることはありませんか?
そんな朝は会社に着いてもエンジンのかかりが悪く、業務時間を有効に使うことができないでしょう。
しかし、お酒をやめると朝の不調から解放され、午前中からフル稼働が可能に!
結果的に残業時間が減ったり、仕事の成果物にも差が出てくるはずです。

◆ダイエット効果が期待できる

洗顔する女性

ビールやワイン、日本酒などの醸造酒と呼ばれるものはカロリーが高めです。
また、お酒を飲んでいると、ついつい味の濃いものや高カロリーのものが欲しくなります。
酔った勢いで食欲のタガが外れ、食べ過ぎてしまうことも少なくありません。
日常的にお酒を飲んでいた人は、アルコールからのカロリー摂取量が減るだけでなく、食事の量も適量になるため、ダイエット効果が期待できます。

◆睡眠の質が良くなる

眠りにつく女性

お酒を飲むと寝つきは良くなりますが、睡眠の“質”はとても悪くなります
睡眠には、浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」があります。「ノンレム睡眠」はステージ1~4まで深さがあり、数字が大きいほど深い眠りということになります。

通常、人間は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の1~4を繰り返しています。
しかし、お酒を飲んだ後の睡眠は、「ノンレム睡眠」中にステージ4まで行けず1~2までの深さで止まってしまったり、ひどい時は「レム睡眠」とステージ1の間を行ったり来たりして夢ばかり見てしまったりするのです。
こういった質の悪い睡眠が続くことで、鬱(うつ)などの精神疾患を起こす恐れもあります。
ですから、お酒を適切にセーブして眠りの質を良くすることは、体と心の健康のために非常に重要です。

覚醒と睡眠の表

◆自分のために使える時間が増える

読書する女性

夜にやりたいことがあったのに、夕飯と一緒に一杯のビールを飲んでしまったばかりに、眠くなってできなかった……という経験はないでしょうか。
これは、お酒には脳の働きを低下させる働きがあるから。

お酒を飲まなければ、スッキリした頭で本を読んだり趣味に時間を使ったりと、自分のための時間が充実してくるかも。
実際、アルコール依存症の患者さんの中にも「お酒をやめて自分の時間が増えた」という人は多く、その時間を使って語学を習得した人や本を書いて出版した人までいます
お酒をたくさん飲んでいる人は、お酒をやめることで有意義な時間を増やせるかもしれません。

禁酒のデメリットはある!?気になる離脱症状とは?

「お酒をやめてみたら眠れなくなった」という経験があるとすれば、それは軽い離脱症状です。
眠くなる・頭痛がするなどと言う人もいますが、それは夜に眠れないことに起因しているかもしれません。
もう少し強い離脱症状としては、手に汗をかいてくる血圧が上がってくる精神的にイライラしてくるなどもあります。

依存症レベルの方では、最後に飲んでから12時間~24時間の間にてんかん発作を起こしたり、虫の鳴き声が聞こえるなどの錯覚が起こることもあります。
さらに24時間~48時間の間には、幻覚が見えてきたり、玉のような汗がだらだら出てくるなどの症状も。

女性の横顔

なぜこのような離脱症状が起きるかというと、アルコールの摂取が続くことにより、脳は「アルコールの入った状態が正常である」と思い込んでしまうからです。
脳がそのような状態で急にお酒を飲まなくなると、これまで高めていた神経の興奮がそのまま出てしまい、夜に寝付けなくなったり、血圧が高くなったりしてしまうのです。

禁酒にチャレンジ!前向きにやめられる方法

もしも上記のようなひどい離脱症状がある場合は、心療内科などに相談してみてください。
病院では、医師の管理のもと、離脱症状を抑える薬を使いながら禁酒をすることも可能です。

また、同じように禁酒をしている仲間と励ましあうことは、とても有効と言われています。
日本にも各地に断酒会があり、中には女性だけのクローズドなミーティングの場もあります。

離脱症状がない人でも、これまでお酒を生活の楽しみにしていた人は、ちょっと物寂しさを感じることでしょう。
そんな時は、お酒を飲んでいたときにできなかったことに挑戦してみてはいかがでしょうか。
本を読んでみたり、フィットネスクラブに行ってみたり。
徐々に新しい知識が身についたり、自分の体が若返ったりすることで前進していると感じられ、禁酒の励みになるはずです。

まとめ

アルコールは簡単に手に入るわりに依存性が高く、様々な病気を引き起こすリスクを秘めています。
禁酒にチャレンジすることで、自分に使える時間が増えたり、睡眠の質が上がったりなど、より健康的で充実した毎日が送れるはずです。

「近頃お酒を飲みすぎているかも」「体調不良が続いている」という方は、ぜひ参考にしてみてください。

監修

松本俊彦先生

松本俊彦先生 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 部長|薬物依存症センター センター長

1993年、佐賀医科大学卒業。
精神科医として薬物依存症や自傷行為に苦しむ患者と向き合い、診療や研究に取り組んでいる、この分野の第一人者。日本アルコール・薬物医学会 理事・日本精神科救急学会 理事・日本アルコール・アディクション医学会理事等。
『アルコールとうつ・自殺』(岩波書店)、『自分を傷つけずにはいられない―自傷から回復するためのヒント』(講談社)、『もしも「死にたい」と言われたら―自殺リスクの評価と対応』(中外医学社)、『薬物依存症(ちくま新書)』 筑摩書房、など著書多数。